キーチャカ
キーチャカ(梵: कीचक, Kīcaka)は、インド神話の人物である。マツヤ国の軍司令官。叙事詩『マハーバーラタ』によるとスータの王ケーカヤの子で、兄弟に1人の妹スデーシュナーと、ウパキーチャと呼ばれる105人の弟がいる。パーンダヴァの妻ドラウパディーに横恋慕し、乱暴な行動をとったために殺された。
人物
性格は残酷で、短気な人間であった反面、マツヤ国・サールヴェーチャカ国の同盟軍とトリガルタ国との度重なる戦争において武人としての能力を遺憾無く発揮し、トリガルタ国王スシャルマンと直接戦って勝利をおさめていた。彼の武勇は周辺諸国に知れ渡り、キーチャカが健在であることは周辺諸国に対して軍事的抑止力の役割を果たした。またキーチャカの妹スデーシュナーはマツヤ国の王ヴィラータの王妃であり、したがってヴィラータ王の義理の弟であった。これらの理由からキーチャカは絶大な権力を持ち、ヴェラータ王であってもキーチャカの行動に口を挟むことができないほどであった。そのため、人々はヴィラータを名ばかりの王だと噂していた。
神話
カウラヴァによってクル国を追放されたパーンダヴァとその妻ドラウパディーがマツヤ国を訪れたときのことである。彼らは正体を隠し、ユディシュティラは賭博師、ビーマは料理人、女装したアルジュナは舞踏師、サハデーヴァは牛飼、ナクラは馬手、ドラウパディーは王妃の召使い(サイランドリー)として、ヴェラータ王の王宮に仕えた。キーチャカは王宮で働くドラウパディーを見てすぐに恋に落ちた。そこでドラウパディーに言い寄ったが、ドラウパディーは自分が身分の低い卑しい女であること、結婚して夫いることを理由に拒絶した。しかし諦めきれないキーチャカが妹に相談すると、スデーシュナーは「彼女を兄の館に酒を取りに遣わすので、高価な酒を用意して待っていてください。そして人のいないところで口説いてください。もしかしたら頑なな彼女も心を動かされるかもしれません」と助言した。そしてドラウパディーをキーチャカの館に遣わせた。
ドラウパディーは嫌々ながらキーチャカの館に向かったが、出かける前に太陽神スーリヤに祈りを捧げた。彼女の祈りを聞いたスーリヤは姿の見えないラークシャサにドラウパディーを守らせた。